長久手市文化の家さま

「わが家のような」優しいホール
- 舞台音響設備全般改修
名古屋インターから車で約10分ほど、落ち着いたたたずまいながらも整然とした印象を感じるロケーションの中に総合文化施設「長久手市文化の家」があります。プロセニアムアーチが前後に移動してさまざまな舞台空間が作り出せる「森のホール」と、シンプルで使いやすい「風のホール」を擁したこの総合文化施設は、1998年の竣工以来、市民にとって「我が家」を感じるほど親しみ深い芸術の拠点となっています。
JATOでは長久手市文化の家さまの「森のホール」「風のホール」の舞台音響設備全般の改修施工を担当させていただきました。

▲長久手市文化の家外観
音響効果が向上し、よりアーティストが身近に感じられる「森のホール」に

▲森のホール

▲舞台から客席を臨む
森のホールは、最大711席+車いす6席の木をふんだんに使用した優しさあふれるホールです。プロセニアムアーチの前後移動が可能なことで様々な用途に舞台形状を変化させることができます。
子ども向けの公演や社交ダンス大会などでは、1階中央席のすべての客席を収納して平土間形状の舞台として使用することもできます。
天井が抜けているため残響が少なく、メインスピーカーであるセンタークラスタースピーカーが可動式で降りてくるなど多くの特徴があります。本ホールの改修ではスピーカーの取り付けに最も注力しています。舞台左右両脇の開口は既設のものをそのまま使用していますが、さらに舞台内側向けに新たな開口を設けて既設と同等のサランネットを貼り、スピーカーの増設を行っています。

▲左側が既設、右側が新設の開口部

▲開口部の裏側
また、センタークラスタースピーカーにはパッシブスピーカー4台を新規に組み込んでいます。さらにホール中央上空で合唱やオーケストラの音をひろう2点吊りマイクも、駆動ワイヤー(電動)を含めすべて交換させていただきました。

▲センタークラスタースピーカー

▲2点吊りマイク装置

▲デジタルアンプ架
アナログからデジタルアンプへ置き換えることで、アンプ容積がコンパクトになり、アンプ架も4架から3架へと削減されました。以前はアンプ台数が多かったこともありアンプから発生する音も大きかったのですが、デジタル化に伴い音の発生が抑えられ、また、消費電力も約1/2へと大幅に削減されています。
オープンから20~30年経過したホールの改修を行う場合、スピーカー増設に伴って電源の追加工事も多く必要とされますが、今回のようにデジタル化へ移行することでトータル消費電力を削減し、電源増設工事を不要とできます。
パワーアンプと音響調整室を結ぶ伝送距離が100mを超えるため、すべて光ケーブルによりデジタル化されました。コンパクトにまとめられた操作卓で使いやすいシステムとしています。

▲森のホール音響調整室
シンプルでオーソドックスな「風のホール」。だからこそ基本的な音響を充実
風のホールは、両サイドの赤色H鋼がむき出しで、さながら演劇小屋のような空間です。最大、固定292席+車いす6席のこのホールでは、ピアノ発表会や小編成の音楽コンサートが多く催されています。風のホールでも、改修は舞台両脇のスピーカーを中心に行いました。

▲風のホール
風のホールは縦に長い形状でやや高低差もあります。そのため、後方の客席に音を届ける目的でスピーカーを増設しました。元々は左右2台ずつスピーカーが配置されていましたが、改修後は左右に4台ずつスピーカーを設置しています。また、ホール中央に吊り下げられた3点吊りマイクは手動から電動に改修しました。
風のホール音響調整室内の機材もアナログからデジタルに改修しました。アナログからデジタルへの機器変更やスピーカーの増設・入れ替えは見た目にはわからない部分ですが、音質、操作性、拡張性、そして省エネ性の面で大きく進歩しています。

▲風のホール音響調整室
ご担当者からのコメントをいただきました
長久手市文化の家 管理係長 白木 敏雄さまに伺いました
全改修をされるきっかけはどのようなものだったのでしょうか
竣工から約15年が経過した時点で、改修についての検討がはじまりました。音響面では新機材への見直しや現行機材の調整について検討を進め、新しい機材による効果や省エネ性を考慮して全面的な大改修が計画されました。実際には2017年の2月1日から6月30日までを休館として工事を行い、7月1日にこけら落としとなりました。
音響改修について市民のみなさまの反応はいかがでしょう
音響設備は見た目ではわかりませんが、お客さまからは音質が良くなったとの声をいただいています。
ジャトーの対応はいかがでしたか
設計変更が多くありましたが、よく対応していただけました。また、音響面だけではなく建築、空調、照明、舞台、電気すべての改修工事でしたから、5ヶ月間という限られた工期の中で6社同時に工事を行う調整がたいへんだったと思います。
改修を終え、これから長久手市文化の家はどう活用されるのでしょうか
長久手市文化の家は、親しみやすいホールを目指しています。動員数よりも催しの内容にこだわり、たとえば音楽に触れる機会が増えていただけるように子供たちの招待公演も行っています。また、子供たちに会場でのマナーも学んでいただけるような企画もあります。
当市では音楽や演劇事業に力を入れてきました。今後は多様な文化事業に取り組みたいと考えています。音響改修でさらに多くの人がより良い音に触れ、長久手市の文化振興に寄与していただければとてもうれしく思います。
ありがとうございました。